外科的摘出
乳腺腫瘍が確認された患畜はまずは身体検査により、全身状態に問題が無いか、肺などへの遠隔転移が無いか、また特に予後が要注意である『炎症性乳癌』で無いか、などが調べられます。
問題が無ければ良悪関係なく外科手術による早期摘出が治療の第一選択となります。
乳腺腫瘍を早期摘出をお勧めする理由は以下の2点です。
ひとつは、良性腫瘍であってもそれが将来的に悪性に転化する可能性があるという事です。実際、良性腫瘍を持つ犬は健常な犬に比べて悪性腫瘍に対する9倍のリスクがあるとされています。
もうひとつは、そもそも乳腺腫瘍自体の悪性度の判定自体が難しいという事です。摘出以前に腫瘍の良悪を判断する方法の一つとして、針を用いて、腫瘍細胞を吸引し、顕微鏡で確認する細胞診断というものがあります。しかし乳腺腫瘍というものは細胞同士の性質上、この細胞診断にて良悪の判断をつけることが非常に困難であり、近年では判断をつけてはいけないと言われています。乳腺腫瘍の良悪の判断は組織摘出後の病理組織診断に依存します。乳腺腫瘍であるという診断は手術前に行われ、摘出された腫瘍組織によってのみ良悪の判断がなされることになります。